彼の生い立ちは、生まれ故郷のザンジバルや寄宿学校に入ったインドで
普通の人生に埋もれてしまっても、決しておかしくない境遇にあったはずです。
それがイギリスに渡り、ロック・スターになってしまうんだからものすごい。
才能が彼を導いたのでしょうか。時代が彼を見出したのでしょうか。
一つ言えるのは、環境が彼を育んだのだということ。環境の変化は、沢山の
文化を吸収させ、家族の愛は周囲の人々への深い愛情となったのでしょう。
ゾロアスター教では人生は“祝祭”という考えがあるそうでが、まさに彼の人生は
“祝祭”であり、その中の登場人物を演じることだったのではないでしょうか。
インタビューシーンでの彼と、舞台の上で“フレディ・マーキュリー”を演じて
いる彼は、表情も言葉もまるで別人です。
映画には、フレディの母親、叔母、妹、プロデューサー達など、色々登場しますが
一番長く彼と暮らした女性の恋人と最後の男性の恋人の語りが胸を打ちます。
それから、モンセラート・カバリエとの交流の深さ。今までは、エキセントリックで
理解されない孤独なカリスマだ思ってたんです。愛され、自らも深い愛情を
持つ人だったのです。
絢爛豪華な祝宴をかけぬけ、狂気と饗宴の時代の終焉とともに、彼は旅立っていきました。
