こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「セントアンナの奇跡」 Miracle at St. Anna

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http://www.stanna-kiseki.jp/

2008年アメリカ映画
監督:スパイク・リー  原作・脚本:ジェームス・マクブライド
出演:デレク・ルーク、マイケル・イーリー、ラズ・アロンソ、オマー・ベンソン・ミラー

スパイク・リーといえば、自らのアイデンデティであるアフロ・アメリカンが抱える
社会問題をテーマとした映画を撮る監督です。今回の舞台は第二次世界大戦
バッファロー・ソルジャーと呼ばれた黒人部隊が、イタリアで遭遇した出来事を描いています。

<何一つ問題無く勤め上げてきた定年間近の郵便局員が、窓口に現れた男を見るなりドイツ製の銃で
男を射殺するという事件が起きた。犯人の家には、失われたイタリアの重要な文化財が発見される。
この不可解な事件の鍵は、1944年のイタリア・トスカーナ地方にあった。>

今まであまり考えたことはなかったのですが、第二次世界大戦当時といえば、アメリカの中では
人種差別が当たり前のようにまかり通っていた時代です。黒人の方たちが公民権運動を経て、
平等な権利を獲得するまでは、まだ10数年の時を待たなければなりません。そんな中でも
黒人の人たちも徴兵され、理解のない上官の元、前線で危険にさらされていたのです。

トスカーナ地方の前線で孤立した4人の兵士は、一人の男の子を助け、小さな村に身を隠します。
村の人たちとの交流で、彼らは初めてある種の“自由”を感じます。

スパイク・リーは今までも人種問題を扱った映画を撮っていますが、戦場を舞台にした映画は
初めてです。そしてこの映画、もちろん人種問題を扱ってはいますが、それ以上の視点を
感じることができます。ドイツ人も、イタリアの村人も、パルチザンも、アメリカ人も
バッファロー・ソルジャーたちも、言葉こそ違え、同じ神に祈りを捧げています。なのに、なぜ
殺し合わなければならないのか。ひたすら重苦しく描かれた映画になってはいないものの、
見ていてつらくなります。

やがて、セント・アンナで起きたことが明らかになり、その事件とその村にいた人たちの
運命が絡み合ってきます。最後には惨い結果となるのですが、その中でも一筋の光、
奇跡が待っています。人間にはまだ、“信じること”、“希望”が残されていることを
見ることができます。