こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

コンペティション部門 「NO」

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2012年 チリ アメリカ作品
製作:ファン・デ・ディオス・ラライン、ダニエル・マルク・ドレフェス
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、アルフレド・カストロ、ルイス・ニェッコ、アントニア・セヘルス
 
<1988年、ピノチェト大統領の軍事独裁政権下のチリ。国際的な圧力により、大統領の任期を
8年延期することに対する国民投票を行うことになった。反対派は広告界の若手を 
"NO"キャンペーンに起用。それまで自由に報道をすることなど出来なかったTVで
毎日15分のPR番組を展開していく。>
 
今日は上映後、プロデューサーのダニエル・マルク・ドレフェスさんが登壇いたしました。
若くてとてもお育ちのよさそうなダニエルさん、とても分かりやすく丁寧な英語で、
今日は観客からの質問もよく、面白い話をいろいろ聞くことができました。
 
この映画の舞台は‘80年代のチリ。実際の選挙キャンペーンで起きたことを、史実をなぞり
実際の映像を交えながら描いています。初め、ずいぶん荒い映像だと思ったのですが
実際のの映像と、俳優たちの映像の間にギャップがなく、本当に当時にいるような感覚になります。
 
これ、実は監督のアイデアで、全て映画を'80年代のビデオカメラ(Sony製)で撮影しているからなのです。
ネットで探し、たくさんのカメラを購入したそうですが、それでも2時間以上動くカメラは何台もなかった
そうです。
 
また、映画部分に出演している人たちの中には、当時のキャンペーンに本当に関わった人達が
出ています。キャンペーンの歌を歌っている女性コーラスの人達は、当時本当にその歌を歌った人達
だそうです。ガエル・ガルシア・ベルナル演ずる、広告業界のレネ・サアベトラ。彼には2人の実在の
人物が投影されているそうですが、その二人は映画の中では"Si"(Yes)の陣営の人として
映画に出演しています。
 
日本では、ピノチェト政権がどのようなものだったか、あまり知られてはいないと思います。
欧米では、アムネスティ・インターナショナルが非難し、クラッシュやスティングが歌に取り上げたり、
ハリウッド俳優たちがキャンペーンに参加するなど、政権下で起きた虐殺・拷問・強制収容などで
行われた人権侵害は、広く知られています。しかし、このピノチェトも、反共産主義のために
アメリカに担がれ、政権を握った人のようです。そして、暴力・弾圧・統制による厳しい独裁者として
16年にわたってチリを支配しました。
 
今や高い経済成長を遂げた、チリ。この時代を過ごしてきた人達が、この映画を見て、
今も世界のどこかで起きている事を見て、何を思うのでしょうか。
 
ラライン監督やガエル・ガルシア・ベルナルは、別の映画の撮影に入っており
日本にこれなかったことを残念に思っていると、ダニエルさんがおっしゃっておりました。
 
「アモーレス・ロス・ペロス」で初めてスクリーンでお目にかかりましたが、よい俳優になりました。
とはいえ、この方イギリスの名門学校で演技を学び、ご両親もメキシコの俳優であるという
結構なサラブレッドなのであります。ハリウッド映画にも時々登場していますが、やはり
スペイン語圏の映画のほうがしっくりきていると思います。「天国の口、終わりの楽園」とか
チェ・ゲバラの若かりし頃を演じた「モーターサイクル・ダイアリーズ」はお薦めです~。