こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

ブロークバック・マウンテン

アン・リー監督は、このところ「グリーン・デスティニー」とか「ハルク」とか、娯楽大作が続いていましたが、「推手」「ウェディング・バンケット」の頃から人間をとても丁寧に描いてきた監督だと思います。この「ブローク・バックマウンテン」については、「ラスト・ショウ」の原作でも有名なラリー・マクマートリーとダイアナ・オサナの素晴らしい共同脚本と、アン・リー監督の美しく繊細な映像表現によって、普遍的な人間の愛を描いた映画になったと思います。

ある夏ふたりのカウボーイが出会い、魅かれあいます。はずみから情熱をぶつけ合い、仕事の終わりと共に分かれていきますが、その情熱を忘れることが出来ない。それぞれが表向きには家族を持ちますが、社会からはじき出されるのをおそれ、密かに20年間関係を続けていきます。このふたりの男の物語も、むくわれない男女の恋愛となんの変わりもない、切ない苦しい物語です。

でも、この映画が台湾出身のアン・リー監督が撮ったということを考えると、アジア映画的な “ホモ・ソーシャリティ*”な部分があるのではないかと思わずにはいられません。もともと、カウボーイの仕事なんて男の世界だし、男だけの充実した連帯感とその裏腹にホモフォビア的感情が同居しているのでしょう。(“ホモ・ソーシャリティ”という言葉はイギリズのセジウィックという人の理論ですが、映画とのつながりについては、詳しくは、「男たちの絆、アジア映画―ホモ・ソーシャルな欲望」[四方田犬彦斉藤綾子編、平凡社]をご参照ください。)