こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

花よりもなほ

是枝監督の時代劇、行ってきました。

時代は元禄。浅野匠守が吉良上野介を相手に刃傷沙汰を起こした直後の頃。
主人公の青山は、仇討ち目的で江戸の長屋に住み着いて3年。その長屋がとんでもなく
おんぼろで、住んでる人たちはそこにふさわしい、それなりの人たち。
働かないぐうたら親父と働き者の娘。道楽者に訳ありの若者。医者の所に集まる
あやしい男たち。口では忠義といいながら、なさけない素浪人。大家と身請けされた
若い後妻。代筆屋のじいさんに古い手紙を読んでもら男。子持ちの美人未亡人。
何を商売にしてるんだかよく判らない人たち。江戸の人たちの暮らしはかくありなむ
という感じで、可笑しくも優しく、いきいきと描かれています。

時代劇や歴史物は武士の立場から描かれるものが多いですが、江戸時代だったら
武士の階級なんて人口全体の1割ぐらいだったでしょう。何もできずに食い詰めて
自分より貧しい暮らしをしてる武士も多かったでしょうから、普通の庶民からみたら
義だの忠だのっていうのは、絵空事かちゃんちゃら可笑しい話だったかも知れません。
桜を死に際にたとえる貧乏浪人に対して“でも、桜は来年にまた咲くために散るんだろ”
っていう厠の番人のお兄ちゃん。“憎しみを別の物に変えた”という、幼い子供を
抱えた武家の未亡人。今の私たちも胸を打つ言葉がありました。