こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「古惑仔情義篇洪興十三妹」 Portland Street Blues

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監督 : レイモンド・イップ  1998年作品
出演 : サンドラ・ン、クリスティン・ヨン、アレックス・フォン、スー・チー

「古惑仔」シリーズの傍流の話の中の一作ですが、丁寧な造りに映画になっている作品です。
日本では1999年東京レズビアン&ゲイ映画祭で一度上映になっていますが、それ以外の
上映やビデオ化などはお目にかかっていません。

本流シリーズのなかに、十三妹という女ボスが登場します。彼女がどうしてこの世界に
入ったのかが描かれています。十三妹が生まれ育ったのは、ポートランド・ストリート
(砵蘭街)。いい年して下っ端ヤクザで、気が弱くて人の良い父親と二人暮し。厳しい
世間の中、幼馴染の阿潤と上手く立ち回りながらたくましく生きています。彼女の片思いの
相手は無口なボクサー可楽。彼は父の所属する組洪興社と対立する、東星社の
人間です。父親の兄貴分とのいざこざから父親が殺され、自分も危険な立場におかれる
ことになります。無邪気な彼女が、目の前に突きつけられた現実の前で自分の道を
選択し、成長していきます。

この映画がレズ&ゲイ映画祭で上映になったのは、もちろん同性愛的要素があるからですが、
黒社会という男性社会のなかでの女性の立場の弱さをも描いているからだと思います。
ポートランド・ストリートは、体で稼ぐ女たちの街です。男たちの性と金の欲望を
満たす街。そんな中では女は一方的な弱者にならざるをえない。十三妹を助ける
スカー・フェイスのエピソードは、それを最も象徴したものといえるでしょう。
レズ&ゲイ映画祭ではこのようなジェンダー問題を扱った映画もよく取り上げています。

十三妹は、男手一つで育てられたせいか、女性の友人とはうまくいかないし、女性の気持ちが
わからないと告白しています。でも、彼女が本当に恋をした相手は男、可楽でした。彼女が
立ち向かうのは、女を食い物にする男社会なのです。一方、阿潤が直面するのは自分のセクシュ
アリティでした。彼女がが恋していたのは十三妹だったのです。

映画中シリーズの面々もちらちらと出演し、最後は一同揃い踏みのちょっと都合の良い
結末となりますが、男たちの欲望と、いくつかの切ない恋が絡み合い、2人の女性の未来を
思わずにはいられません。

それから、この映画、役者でも見せます。サンドラ・ンは、無邪気な少年のような女の子から
クールな女ボスまでに成長する十三妹を熱演。香港電影金像賞を獲得しました。30過ぎて少年の
ような無邪気なかわいい役できるなんて、すごいです。それから、可楽のアレックス・フォン、
もっさりして男臭いところがすてき。いい体だし。人の良い弱気な父親は、ン・マンタならでは
の好演です。