こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「ダーウィンの悪夢」 Darwin's Nightmare

渋谷のシネマライズで見ました。オシャレで尖った単館のイメージだったライズが、
最近「木更津キャッツアイ」なんかやっちゃってて、チケット売り場には
“○×△(芸能人の名前)がさあ~~”っていうノリの、地方から来たかの
女子中高生が大声で箸が転んでもの勢いで喋りまくっており、ちょっと何か
場違いの雰囲気で小さくなって並んでおりました。だけど、この映画の上映は
身なりも年齢もずいぶん違う客層の方々でいっぱい。こういうドキュメンタリーを
かけるライズ、まだまだ尖っているなあと思いました。

タンザニアビクトリア湖。そこは、「ダーウィンの箱庭」と呼ばれ、固有種の豊富な
適者生存の進化論の見本のようなところでした。しかし、誰かによりナイルバーチという外来種
肉食魚が放流されたことにより、湖の生態系はもとより人間の生活まで変えてしまいました。

以前アフリカ担当の仕事をしていた頃、タンザニア社会主義の国でした。外貨取引の
制限があり、支払いの受け取りが難しかったことを覚えています。やがて社会主義は破綻。
豊かな資源を持つはずのアフリカ諸国は、“グローバル化”の波に翻弄され続けているのです。

能天気な日本人は、ナイルバーチの輸出で経済が潤い雇用が生まれていいじゃないって
単純に思ってしまうかもしれません。しかし、それはそこではありえないことでした。貧困が
貧困を呼び、暴力を生むのです。その現場を、ドラマチックな演出や、サブリミナル的な画面を
作りこむことなく、フィルムは淡々と映し出していきます。搾取と貧困と暴力のスパイラル。
いつの間にかその真っ只中に経たされて突きつけられる、スパイラルの奥に潜む現実の
恐ろしいこと。

搾取される側のタンザニアの貧困にあえぐ人々は、生まれた時から貧困と病気、暴力と紛争の
ある世界に生きている。彼らはその世界しか知らないし、今日の命のことしか考えられない。
搾取している側のタンザニアの企業主やナイルバーチを輸送するパイロット達は、自分達が
していることの裏側をわかっていながらも、見ようとしない。

そしてこれは、私達日本人にとっても人ごとではないのです。是非見て、我々もその
スパイラルの一端を担っているということを、認識してみてください。

http://www.darwin-movie.jp