こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「墨攻」 A Battle of Wits

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戦国時代がどのようなものであったか、「墨者」がどのような人たちであったかは
原作か映画の解説を見ていただければだいたいお分かりいただけると思います。戦闘と
殺戮、智謀と策略、憧憬と嫉妬の間での人間たち。人の話として見れば、人類が
何千年も愚かであり続けたことへの警鐘ともとれますが、主人公革離の話として見れば、
なんとも報われないお話です。

とはいえ、革離は「墨者」。自分のする行為に何の見返りも求めてはいません。
その彼の清廉な行為が、逆に恨み・妬みの対象になってしまう。しかしそれは
周囲の問題だけではなく、自分自身にも引き金があるのです。戦いには勝っても
戦うことに迷いが出た時、彼の歯車が狂い始めるのです。

戦争の場面が多く、多少理屈っぽいし、甘ったるいところはひとつもありませんが
そのスケールとアクションには圧倒されます。整然とした趙の大軍隊は、CGなんかじゃ
ないんです。(人民解放軍が借出されたようです。)ハリウッド資本ではなく、
日韓中の資本と技術で、これだけの映画ができるようになったのだと実感しました。
しかし、見せ掛けだけのアクションドラマではありません。主要人物だけでなく
梁王、その息子、家臣たちから普通の人たちまで、丁寧に個々の登場人物を描いています。
やっぱりジェイコブ・チャン監督は、人間ドラマの監督です。

革離のアンディは・ラウ、原作漫画のイメージとは違いますが、この孤高の男を演じて
存在感を見せつけらることができるのは、やっぱり彼ならではでしょう。敵の智将
巷将軍の韓国俳優のアン・ソンギも迫力十分。子団のウー・チーロン(ニッキーですよ)、
久々に映画でお目にかかりましたが、相変わらずバリバリ若作りの美青年タイプでした。
逸悦については、ファン・ビンビンがどうのというわけではないのですが、唯一の女性で
あり騎馬軍の指揮までしているわりには革離を前にアッサリ女になっているのが物足り
ないかなあ。でも、この世の中で女は柔軟性があっていいってことか。

苦しくも切ないですが、ただの勧善懲悪時代劇ではありません。もう一度見なくちゃ。