こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」

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カンヌの“批評家習慣”に正式招待された作品です。ブラックで面白哀しい映画でした。

とある、ケータイも繋がらないような田舎の家。血の繋がらない兄とその嫁、妹が住んでいます。両親が事故死したため、東京にでていた女優志望の娘が帰ってきますが、兄と妹二人の間に過去の出来事から生まれた緊張感がよみがえります。

この女優志望の女とんでもない勘違い女で、自分の願望をかなえるためには何をしてもよいと思っています。過去に自分をネタに恐怖漫画を描いて笑いものにし、賞金をもらった妹を執拗にいじめ、体で縛りつけた兄から金も心も搾り取る、悪魔のような女です。自分では全然悪いと思ってないんですよねー。なぜか妹は、だまって姉の仕打ちに耐えている。兄は、妹に対する負い目を感じながら、家族をなんとかしなくちゃと悩んでいる。何も知らない兄嫁だけは妙に明るく振舞っているが、他人行儀で時々暴力をふるう夫には、なぜか黙って耐えている。

映画は漫画的なコミカルさを出しながらも、なんだか重苦しい感じにも包まれています。“家族”だからって、分かり合えるわけじゃないんですよね。姉妹だからって、思い合えるわけでもない。私には姉妹がいないので分かりませんが、同性だからこそ溝が深いのかな。

だけど最後は一発逆転あり。この姉にして、この妹ありかーと思いました。結局女のほうが、自己実現本能が強いのかもしれません。若い女は“家族”なんかより自分が大事だったりするわけですから、社会的規範に縛られた兄(男)よりは、より自由にたくましく生きていくのです。

佐藤江梨子は、演技はともかくハマリ役。でしょう。妹の佐津川愛子も、かわいいけどネクラなオタクが良く似合う。 永瀬正敏永作博美は、若い2人とはひとつ線を越えたウマさを見せています。

分からないことが二つ。動かない扇風機が動いた意味と、映画の題名はどこからきたのかってことですね。後からいろいろ自分で考えてみるのも、映画の面白いとこです。

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