こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「ラスト、コーション」 Lust, Caution

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何とも、しばらく後味が残る作品でしたねー。極限状態、生死の淵での愛憎。
そんなもの経験したことがなくても、主人公に思い入れざるをえない。これは、
何なんでしょう。私も大人になったのか。

女は抗日運動を誓い、敵である男に近づくために芝居を始める。過酷な運命に翻弄
されながら自分の中に起こる変化を感じる。それともそれは自分で選び取ったものなのか?
なんて考えるとねー。いつまでも後に残ってしまうのでした。

アン・リー監督は、どこの場所でもどんな時代でも、人間の普遍的な問題を
無理なく自然に描いてきましたが、今回は一人の女性の視点で描いたと言っています。
女性から見ればチアチーの感情の流れは理解し得るものなのですが、男性から
見たら生々しい女の恐ろしさが見えてしまう話であるかもしれない。もしくは
個人の内面的なものより、政治や社会をふまえて俯瞰して考えるものかもしれない。
でもアン・リー監督は、あくまで主人公ワン・チアチーの視点、もしくは原作者
張愛玲の視点で描いています。だからこそ、女性としては理解、というか感覚的に
受け入れられるものになっているのだと思います。実際、男はどう見るんでしょうか。
チアチーはどのような女に見えるのか、男からみたイーは、どのように映るのでしょうか。

トニー・レオン演じるイーは、傀儡政権の顔役といった役どころ。少々老けぎみの
メークに洗練された立居振舞が、イーという人間の人生と人間性を生々しく感じさせます。
その上イーの孤独感が相まって、やっぱりいい男。危険な男と分かりつつもひき付けられて
しまいますよね。

それに比べてワン・リーホン演じるクァンの、青臭さ。彼が初めににチアチーを女として
受け入れていれば、彼女の不幸もあのようには訪れなかったでしょうに。なさけないっ。

結局男は社会や組織とその建前の中でしか、生きられない。そうれを思うと、個として
自分の運命を選び取ったチアチーの、女としての強さを思わざるをえませんね。チアチー
演じるタン・ウェイ、体当たり演技もすごいですが、ほんの小娘から女になっていく
様もすごい。やっぱ、女はコワイかも。

この映画を見てもう一つ心に残ったのは、1940年前後の香港の姿。中環や尖沙咀
様子やCGで再現された風景。人々の服装や生活の様子。当時の香港にタイムスリップした
ようで、香港オタクとしては感動にうちふるえました。