こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「ヴィーナス」 Venus

5月8日DVD発売の映画の試写会に行って来ました。老いと生について考えさせられる映画でした。

モーリス(ピーター・オトゥール)は、かつては2枚目俳優として成功し、数々の
女性と浮き名を流してきたが、すでに70歳を超え、今や死体役やら脇役を演じる日々で
気持ちは萎えるばかり。ある日、同じ年寄り俳優仲間イアン(レスリー・フィリップス)の所に
若い姪ジェシー(ジョディー・ウイッテカー)がやって来た。地域も世代も常識も、喋る言葉も
まったく違うジェシーに対し、苛立ちを覚えるイアンをよそに、モーリスは彼女に興味を持つ。
昔の情熱を取り戻し、ときめく日々がやってきたのだ。

モーリスが自分の人生の中で追い求めつづけたもの、それは魅力的な女性への情熱。
70を過ぎても、その執着は衰えることはない。時には醜悪でさえもある位に。しかし
その情熱の追求は、自分に忍び寄る死の足音振り切るためのようにも見える。

ジェシーの持つ若さは、利己的で思慮に欠け、そして暴力的。老人が築き上げた心の城に、
足で踏込み破壊する。でも、それを追い求めずにはいられない。自分がもうすでに、過去の
自分とは違うということを理解しながらも。

自信と、煩悩と、焦燥と、後悔と、諦めの、複雑に混じり合った、とても人間くさい魅力的な
老人を、あのピーター・オトゥールが演じています。見た目は年を取りましたが、あの澄んだ
グリーン・アイはそのまま。その目でモーリス同様、多くを見、多くを感じてきたのでしょう。

モーリスと元妻ヴァレリー(ヴァネッサ・レッドグレーブ)の、やり取りには涙が出ます。
二人の間にあった葛藤が、多くは語らないやり取りのなかに、幻燈のように浮かび上がり、
時間や葛藤を飛び越えたかに見える、二人のキスシーンは忘れられません。