こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「マンデラの名もなき看守」 Goodbye Bafana

20年前に「遠い夜明け」という、南アフリカの黒人運動家スティーブ・ビゴとジャーナリスト
ドナルド・ウッズの交流と、二人の運命を描いた映画を見たことを思い出します。アパルトヘイト
いう言葉は知っていても、その実態を見ることはなかった。映画を見て、ずいぶん衝撃を
受けたのを覚えています。

「遠い夜明け」上映当時は、ネルソン・マンデラはまだ獄中の人でした。ほんの20年前の
ことでもあり、その20年間に世界は変わったのです。そのマンデラも90歳。初めて自分の
人生を映画化することを許可したのがこの「マンデラの名もなき看守」です。
月日の流れを感じます。

映画の主人公は、原住民の言葉であるコーサ語を理解することから、黒人活動家の監視を
することになった、刑務所の看守ジェームス・グレゴリー。彼は、当時の南アフリカの白人の
人々と何等かわらぬ、人種隔離政策を支持する人だった。驚くことに、白人の人々は黒人の
活動家がどのような主張を行っているかをまるで知らず、というより国家の規制によって
知らされておらず、活動家はみなテロリストだと考えているのです。

最悪のテロリストと呼ばれていた、マンデラに初めて会ったグレゴリーは、彼の人格に
興味を持ち始める。彼は、人に憎しみを抱いた恐ろしいテロリストではなく、家族を思い
国を思う、一人の生身の人間でした。二人の間に会話が成立し始めるとともに、囚人と看守という
お互いの立場を踏み越えることはなくとも、理解と尊重の気持ちが生まれてくるのです。
そしてグレゴリーは、何の偏見も持たなかった少年の頃の、黒人少年との友情を思い出したのです。

お互いを何も知らず、知らないことが、恐怖を生み憎しみを生む。今もまだ、世界のどこかで
同じようなことが起きていることが悲しい。確かに、踏み越えられない違いが存在することも
あるでしょう。でも、誰もがグレゴリーのように、相手のことを知る機会をもち、相手が
同じ人間であることを知ろうとできれば、と思いました。