こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「チェ 28歳の革命」 Che : Part One/The Argentine

おくればせながら、2009年の劇場鑑賞1作目は、こちらの映画となりました。カストロの右腕として、キューバ革命を成功に導いたチェ・ゲバラを描いた2部作のうちの第一部です。

アルゼンチンの裕福な家庭に生まれながらも南米住民の状況を憂い、キューバ革命に身を投じボリビアに散る、エルネスト・“チェ”・ゲバラ。日本では彼について馴染のない方が多いせいか、映画の前に多少の説明が入ります。それでも、映画自体は数年の時が交錯し、ドキュメンタリータッチに淡々と進むこともあり、彼について知らない方にはちょっと分かりにくいかもしれません。

彼がなぜ革命に身を投じることとなったのか。その心情を捉えるためにウォルター・サレス監督作「モーターサイクル・ダイアリーズ」をご覧になるとよいかもしれません。ゲバラの映画というより珠玉の青春映画という感じですが、スティーブン・ソダーバーグ監督自身も、“(自身の2部作のための)最高のセットアップ。これですばらしい3部作になった。”なんていう評価をしています。エルネストが若き日の冒険で見たものが、その先の彼を作ったのだということがよく分かります。

第一部は、ゲバラカストロと出会い革命を成し遂げ、国連で演説を行うまでの数年間を扱っています。決してヒロイックにもドラマチックにも描かれていません。本物のゲバラのほうが、主演のベニシオ・デル・トロよりハンサムだし。

歴史的事実はもとより、ゲバラに関するエピソードは全て取材等から得た事実に基づいており、だからこそ彼のリアルな人間像が浮かび上がってくるのでしょう。監督、スタッフはもとより、デル・トロはかなりのリサーチと研究をしたらしく、減量、アルゼンチン訛りのアクセント、持病の喘息、仕草、そして声色まで変わっています。もともとこの企画を持ち出したのはデル・トロ。7年もリサーチをしたといいます。気合の入れ方が並みではありません。

また、全編スペイン語映画であるところも、リアルさの要因の一つでしょう。アメリカ人は字幕嫌いといわれていますので、チャレンジではあると思いますが、ゲバラキューバ人達が英語話すなんてうそ臭いですもんねえ。

昨日オバマ大統領が就任演説で、“一部の人たちの貪欲さ、無責任さ”が作り上げた世界の現状について言及しておりましたが、彼の語るアメリカ及び世界の現実は、ゲバラが戦った現実とかぶり、この歴史の転換点でこの映画が作られたことの巡り会わせを感じずにはいられません。

ゲバラは強烈な“個”の人で、選んだ方法については様々な意見があると思いますが、強烈な個人の信念に貫かれたもの。しかしその信念は、人々への愛に基づく公のためのものであり、自身の“個”を超えている。今、世界に、日本に、これだけの信念をつらぬける人がいるでしょうか。だからこそ、今尚その存在が注目されているのではないでしょうか。是非、映画を見てお確かめ下さい。

第二部も、もうまもなく上映です。「レッド・クリフ」みたいに半年も待たされませんよ。

注)シネスコサイズの画面に、ハンドカメラ多用なので、劇場の前のほうの席で見ると目が回ります。第二部はビスタサイズみたいですけど。