こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「海角七号 君想う、国境の南」 海角七號

イメージ 1

2008年台湾作品
監督・脚本:ウェイ・ダーション
出演:ファン・イーチェン田中千絵、中孝介

台湾映画としては史上最高、外国映画を含めても「タイタニック」に次ぐ歴代第二位のヒットと
なった映画が、ついに日本でも公開されました。初日の26日、銀座のシネスイッチでは、主演の
ファン・イーチェン田中千絵、中孝介の舞台あいさつもあり、いつになく賑わったシネスイッチ
でした。

映画の舞台は、台湾南端の町、恒春。台北でミュージシャンとして活動するものの、夢破れ
故郷に戻ってきた阿嘉。不本意にも郵便配達の仕事を引き受けますが、郵便物に日本統治時代の住所に
あてられた、宛先不明の小包を見つけます。中には60年前に書かれた手紙が入っていたのです。

そんなとき、地元で日本人歌手のライブコンサートの前座を務める地元のバンドメンバーの
オーディションが開催され、阿嘉以下、少女から老人まで含めたバンドが結成されます。
てんでバラバラの即席バンドに、世話役の日本人女性友子はキレ気味...。

基本的には現在の田舎町が舞台のストーリーで、そんなに複雑なお話でもないのですが、
個々の登場人物が、それぞれ問題を抱え、解りあえない孤独を抱えていることがとっても
よく分かります。夢破れ、自分を持て余す阿嘉、外国で一人生活しながら不本意な仕事に
翻弄される日本人女性友子、妻に去られた原住民の青年警官、暗さを秘めるシングルマザー、
ちょっとガラは悪そうだけど人情のある町会議員、新製品を必死で売り込む客家のセールスマン、
月琴を引きながら日本語で“野ばら”を口ずさむ郵便配達の老人。そして、彼らのあきらめきれない
思いを代弁するかのような、60年前の手紙。ホロっとして心温まる映画なのです。

60年前に書かれたにしては、ちょっと不自然な日本語とか、引き上げ船にのる日本人女性の
着物ととか、怒りをぶつけるばかりの友子とか、衝突しあう阿嘉と友子の結末とか、
つっこみどころはいろいろありますが、それでも登場人物がよく描けているので
それぞれの人物に共感できる。演出も脚本も素晴らしい映画だと思います。

素朴な町の風景も、美しい海も、登場人物の背景や、台湾語中心のセリフも、台湾社会の
多様性と現実を再認識させられます。最後の海辺のライブは、エンディングを引き立てます。
中孝介とファン・イーチェンの共演“野ばら”も見もの。そして、手紙の結末には
ふわっと涙をそそられました。

製作にはいろいろ苦労があり、監督はお金の工面にも苦労したそうです。こんな、いわゆる
“大作”からかけはなれたような映画が大ヒット。台湾人がこの映画に引き付けられた理由は
何なのでしょう。やはりそこには、台湾人の心に響く感情の琴線があったから、ということでしょう。
それは、日本人にも十分響いてくるものだと思います。

ぜひご覧になってみてください。台湾に行きたくなること請け合いです。