2010年台湾作品
監督:ニュウ・チェンザー 製作:リー・リエ 脚本:ツォン・リーティン
出演:イーサン・ルーアン、マーク・チャオ、リディアン・ヴォーン、マー・ルーロン、クー・ジャーヤン
昨年は、ほんとうに忙しくて、映画館で映画をみることが少なくなってしまいました。
日本経済が停滞するこの状況で、中小の配給会社が立ち行かなくなったり、単館シアターが
閉館になったり、映画好きには憂うべき状況が徐々に進行していたのでした。
として上映された「モンガに散る」が、素早く12/18から上映されてうれしい限り。こういう映画をやる
映画館がなくなりませんように、一月のうちにお参りに行かないと。
さて、映画の話。1980年代、台北一の歓楽街モンガ(萬華)に越してきたモスキートは、転校した学校で
ひょんなことから街を仕切る極道の息子ドラゴンのグループに加わる。暴力にあけくれる
毎日にとまどいながらも、初めてできた仲間たちと友情に結ばれ、次第に極道の道に踏み込んでいく。
もてあましたエネルギーと、うっ屈した怒りを抱える若者たち。今のような携帯電話やインターネットも
なく、自分たちの体でぶつかっていくしかない1980年代の彼ら。最近`80年代が見直されるのも
どこかそんな“熱”に浮かされた時代を懐かしいとかうらやましいとか感じられるからかもしれません。
瑞々しくて切ない青春ドラマと欲望渦巻く黒社会のドラマが、若者たちを通じて絡み合います。
監督は、ホウ・シャオシェン監督の「風櫃の少年」の主演以降、台湾ニューウエーブを代表する役者として
またアイドルを起用したドラマのプロデューサーや演出家として有名な、ニュウ・チェンサー。
アートとエンターテイメントのバランスがいい感じ。頭の切れるモンク役のイーサン・ルーアンと、
純粋なモスキートのマーク・チャオが、新鮮。
若者たちの話だけでなく、モンガで昔から縄張りを張る親分衆や、変化を求める若いヤクザ、
大陸からやってきたたちのからみも、時代を反映していて興味深いし、群像劇としても面白い。
雑多で怪しいモンガの街と、路地を駆け抜ける疾走感。リアルだけどファンタジックな暴力シーンが、
強烈に頭に残ります。アクション監督に、「オールド・ボーイ」のヤン・キルヨンを起用しています。
だからこその、この肉弾戦なんですね。
最後の悲劇は、血しぶきが花弁に変わるとき。せつない余韻を残しています。