こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

コンペティション部門 「ガザを飛ぶブタ」 Le Cochon de Gaza

2010年 フランス=ベルギー作品
監督/脚本:シルヴァン・エスティバル
出演:サッソン・ガーベイ、バヤ・ベラル、ミリアム・デカイア
 
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東京国際映画祭、本日閉幕しました。なんと、先週日曜に見た「最強のふたり」が受賞。
フランソワ・クリュゼとオマール・シーが、主演男優賞をダブル受賞しました。
 
そして、昨日最後に見た、この「ガザを飛ぶブタ」が、観客賞を受賞です。
 
ガザに住むパレスチナ人の漁師が、自分の網にヴェトナムのブタが絡まっていることを発見するという
荒唐無稽のストーリ。漁師のジャファールは、自分が不浄の生き物に関わっていることを知られる前に
なんとか処分しようとするが、そのブタでイスラエル人と商売することを思いつきます。
 
イスラエルパレスチナという、深くて深刻な問題のなかで語られるストーリーですが
とてもユーモラスにできています。監督自身は、ユダヤ人でもパレスチナ人でもない、
ウルグアイ出身のジャーナリスト。そういう人間がこの問題を面白おかしく取り上げてよいものか
という見方もある一方、当事者でない立場だからこそこのような映画を作ることができたのかも
しれないという見方もあると思います。監督自身は、ドイツ人でもユダヤ人でもないチャップリン
「独裁者」を撮ったように、出自は問題ではないと語っています。
 
突然やってきた不幸に翻弄される、小市民的漁師。おかしな話を持ってくるパレスチナ人の
話に突然キレる、ドイツ人の国連職員。家を監視塔代わりに使うイスラエル兵士は、漁師の妻と
一緒にブラジルドラマを鑑賞。漁師とブタを利用して、殉教者に仕立て上げようとする組織。
そして、ブタという、ユダヤにもイスラムにも“不浄”とされる動物を通じて対立する両者の行動が
一致する。結局人間の根っこは同じなのではないかと思えてきます。
 
若いイスラエル人女性を演じたミリアム・デカイアは、今まで何度も上映された映画館に実際足を運び
観客として映画を見たのだそうです。国や地域、客層で笑うポイントが違うのが分って面白かったという
ことです。アラブ系の人達には、やはり漁師と妻近所の人々の細かいニュアンスが分かって面白く、
イスラエルのインテリ層の方にはブラックなポイントが受けていたのではないかと思われます。
 
QA聞いた限りでは、日本人には見た目や状況の面白さのほうが先に立つようで、やはりある意味
イスラエルパレスチナの現実を肌で感じるには遠い所にいるのか、もしくは微妙なところに言及するだけの
知識も力量も不足しているのかなあとも思いました。
 
最後は、漁師夫婦とイスラエル人の姉弟とブタが小舟で漂流し、夢かうつつか判別し難いけれど、
明るい未来見るという、象徴的なところに行きつくのですが、これもまたどちらの立場でもない
エスティバル監督だからこその結末なのかもしれません。