今年の東京国際映画祭は、香港がらみの映画が少なかったのですが、そのなかで一本
貴重な映像をみることができました。
この2本のオムニバス映画、香港国際映画祭のからみで作られ映画祭のみで上映されたようで
DVDにはなっておりません。日本でも、これっきりの上映になるのではないでしょうか。
『香港四重奏』
「もち米炒飯」Fried Glutinous Rice(生炒糯米飯):監督:ハーマン・ヤオ
「もち米炒飯」Fried Glutinous Rice(生炒糯米飯):監督:ハーマン・ヤオ
屋台でもち米炒飯をつくるおばあさんのことを思い出す青年。
「レッドアース」Red Earth(赤地):監督:クララ・ロー
地球滅亡の時、グランドハイアットホテルで赤い服の女を待つ男
「恋は偏屈」We Might as Well be Strangers(偏偏):監督:ヘイワード・マック
「恋は偏屈」We Might as Well be Strangers(偏偏):監督:ヘイワード・マック
『香港四重奏Ⅱ』
「パープル」Purple(紫):監督:ブリランテ・メンドーサ (フィリピン)
死んだ妻を思う老人。上手くいかない恋人を思う青年。
「機密洩れ」Open Verdict(天機洩):監督:ホー・ユーハン (マレーシア)
「機密洩れ」Open Verdict(天機洩):監督:ホー・ユーハン (マレーシア)
密輸事件の捜査のため、マレーシアからきた刑事と協力する香港の警察官たち。
ホテルの部屋から階下を臨む男二人を眺める魚?
「上河図(じょうがず)」13 Minutes in the Lives of...(上河圖):監督:スタンリー・クワン
「上河図(じょうがず)」13 Minutes in the Lives of...(上河圖):監督:スタンリー・クワン
空港からのバスに乗りこむ人々。
「もち米炒飯」のつかみは秀逸。香港では日々失われていくものがあるというような独白とともに
子供のころ、なかなか買うことが出来なかった屋台の生炒糯米飯を思い出す男が登場します。
蓮香居で生炒糯米飯を注文しますが、お店の人は“時間がかかるよ~”といってどうも
他のものにさせたい様子。スピードと効率の社会では、こんな手のかかるものはだんだんと
すたれていくのでしょう。細くて小さなおばあさんが、屋台で重みのあるもち米炒飯をヘラでかき回す様子。
油を敷いた紙にご飯を乗せ、紙袋に入れる様子。ある一定以上の年齢の香港の方々には
ノスタルジックなお話に違いありません。
「黄色いサンダル」は、フルーツ・チャン監督の香港映画へのオマージュかもしれません。
女優志望だった死んだ母。父親は映画の出演者の中にいると信じ、香港映画を見続ける男。
手書きの絵コンテのようなアニメ映像ではありますが、懐かしい映画が走馬灯のように登場します。
宋の時代の人の営みを描きだした絵画をデジタル加工して、上海万博で公開した「上河図」。
空港から沙田行きのバスに乗り込むのは、上海へその「上河図」を見に行ってきた、ツアーの
おばちゃんたちや英語をしゃべる香港人が気に障る大陸から来た金持ち息子とその友人。
「上河図」をなぞるように、バスの中に偶然乗り込んだ現代の人々の営みを描きだしたています。
時が止まったような「レッドアース」の映像も、「恋は偏屈」の若い男女が歩き回る香港の街中も
香港の今を感じることができます。IIでは、3人の東南アジアの監督がメガホンをとっていますが
また違う角度の香港が見れます。
見終わった後、さっそく香港茶楼で、さすがにもち米炒飯はないので普通の炒飯を食べてしまいました。