こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「桃さんのしあわせ」 桃姐  A Simple Life

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2011年中国・香港作品
監督 : アン・ホイ
出演 : デニー・イップ、アンディ・ラウ、チン・ハイルー、チョン・ブイ
 
古い低層角丸ビルのあるような、香港の下町。こういう建物の一角に、養老院とおぼしき看板を
時々見かけることがあります。ビル中幼稚園と同様、どういうふうなところなのか、長寿で日本と肩を並べる
香港の高齢者事情はどんなものなのか、香港の街を眺めながら思うことがあります。
 
日本では最近、"終活”という言葉を耳にすることがあります。だれもが迎える人生の終末。どのように
迎えるかということについて、考えたことがあるでしょうか。それより先に、家族の介護、という問題が
先に頭をよぎるかも知れません。
 
そんな香港の現実、そして人間ならどこの誰でも起こりうる現実を、やさしく描いた映画です。
 
13歳の時から梁家にあがり、家政婦として4世代にわたって家族の世話をしてきた桃さんが
突然脳卒中で倒れます。雇い主の息子ロジャーは、いままで当たり前のようにそこにいた
桃さんの存在の大きさを感じ、忙しい合間をぬって彼女の介護に奔走します。
 
あかの他人が、老人の面倒をみるなんて現実離れしてる、なんて思われてしまうかもしれません。
でも、実はこの映画のプロデューサーであるロジャー・リーの実体験に基づくストーリーなのです。
だからこそ、ただの美談に終わらない、リアリティがあるのだと思います。
 
そして、デニー・イップの演技の素晴らしさが、映画に命を与えます。(ヴェネチア国際映画祭
主演女優賞受賞。)桃さんのこころの動きが、多くの言葉で語られなくても胸にしみます。
桃さんが生きてきた時代、桃さんが作る料理の匂い、桃さんの家政婦としてのプロフェッショナルさ。
桃さんと梁家の人達、桃さんと子供の頃のロジャー。映像になくても目に浮かぶようです。
 
また、桃さんとロジャーを囲む、梁家族や養老院で出会う人達にも、体温を感じるような気がします。
アン・ホイ監督は、「天水圍の人々」でも、市井の人々をやさしく描いていますが、淡々と続く
日常的な情景中に感じる“体温”や”ぬくもり”が、本当にそこに普通に生活している人たちを
感じさせてくれるような気がします。
 
アンディの市井の人ぶりも、みもの。プロデューサーなんて仕事をしてるくせに、ジミーな50過ぎの
独身男を見事に演じていますよ。アンディは、この映画ノーギャラで出演しているのだそうです。
ツイ・ハーク、サモハン、アンソニー・ウォンなどなど、カメオ出演が豪華。
 
それにしても、桃さんの作った牛舌の煮込み、食べてみたいな~。昔の家政婦さんていうのは
本当にこんな風に、厳選した食材で手の込んだお料理をつくったんでしょうね。梁家の人がうらやまし~。
 
中国・台湾・香港では、非アクション映画としては異例の大ヒットとなったこの映画。
幸いなことに、間もなく日本でも公開です。東京では10/13より、Bunkamuraル・シネマにて。
試写会で見ちゃいましたけど、DVD買っちゃいましたけど、もう一度見に行ってきます。
 
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