こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「クイーン」 The Queen

10年前、ダイアナ妃が交通事故で亡くなった前後のエリザベス女王を描いた作品です。世界中誰でも知ってるロイヤルファミリーであるうえに、ほんの10年前の実際の出来事と実在の人物が描かれているわけですから、“それってアリ?”とか“これって本当の話?”という好奇心が先に立ちがちです。でも、見ていくうちに、ゴシップ的な好奇心より描かれた人間への興味が沸いてくるのを感じました。

女王は特異な運命の元に生まれた人間です。王室の伝統を自覚し誇りを持って、若くして女王になってから今まで、数多くの苦難とプレッシャーを通り抜けてきたことでしょう。ある意味、階級の頂点に立つものとして、格式とかふるまいとか、一般の人と違う感覚を持っていても当然ともいえるでしょう。反面、イギリスの古い世代の象徴でもあります。家を守り、家族を守り、感情を直接的に表すことをよしとせず、質素を旨とする。儀式や謁見等では、伝統のプロトコルを守り、相手にもそれを要求する。一方で、外からの風当たりから、家と家族を守ろうとする。また、実際もそうであるのだと思いますが、女王は自分で四輪駆動車を運転し、バルモラルの領地を駆け回る。車の故障と見ると自分で車体を覗き込み、シャフトが折れたと確認する、なんていう面もあるのです。彼女の生まれ育った人生からしてみれば、ダイアナの振る舞いは全く想像のつかない、考えられないものに見えてもしかたがないでしょう。

孤高の人である彼女の立場は、誰にも分かりえない。そんな彼女を、もう一人の頂点であるプレア首相が見つめる。彼女の中の孤独と共に、古き善き時代のイギリスの母を見るのです。作品内では、配慮からか、ダイアナの子供たちは直接的に描かれてれていません。皇太后エジンバラ公チャールズ皇太子などの描き方には、どこか皮肉を感じます。本人たちはどう思っているんでしょう。イギリス王室に関する批判、いろいろとあるとはいえ、こんな映画を作れるぐらいだから、どこかのものよりはよっぽど開かれた王室といっていいでしょうね。