こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「オール・ザ・キングス・メン」 All the King's Men

1930年代に実在したルイジアナ州知事に着想を得た小説の映画化です。想像していたような
1人の男の挫折と栄光と堕落を描いた映画ではありませんでした。

貧しい生い立ちの州の出納官ウィリー・スタークは、小学校建設をめぐる汚職を市民に
訴えますが、誰にも見向きもされません。そんな時、次の知事候補に彼を押すという
有力者ダフィーが現れます。しかし、かれは対立候補の票を流すために利用されてるだけ。
そんな選挙戦を傍観していた記者、ジャック・バーデンは、ウィリーに真実を告げます。
ウィリーが挫折を乗り越え、自分の言葉で選挙民に語り始めたとき、人々の心が彼に
動いていきます。

プア・ホワイト出身のウィリーと、裕福な階級に生まれ育ったジャック。最初はなぜ
2人がお互いを必要としあうのか、つかみにくいものがありました。しかし彼らは
実際のところ、似たもの同士なのだと思います。2人とも自分が生まれ育った階級に憤懣を感じ、
半ばあきらめにもにた失望感をもっている。ウィリーは、その環境を変えるべく戦う人と
なるわけですが、知事の座を獲得してからは手段を選ばぬ権力者となっていく。ジャックは
偽善的な特権階級から距離を置きながらも、過去から離れられずにいる。内向きな
ジャックからみれば、行動するウィリーは停滞する社会に新しい風を起こす人間に
見えたのではないでしょうか。だから、ウィリーのために働くようになる。最終的に
それは、社会だけでなく自分の内にあった感傷的な過去をも崩壊させてしまうことに
なるのですが。

そして、結局ウィリーも自分が糾弾し利用していった有産階級の人々によって葬られる。
自分が利用した有産階級出身の医師アダム・スタントンによって射殺されたウィリーの
血と、ウィリーのボディーガード、シュガーによって射殺されたアダムの血が、
ルイジアナ州の地図のレリーフの上を流れ交わっていくのが印象的。この映画の意図が
一番伝わってくるところです。

ショーン・ペンは、やっぱり一筋縄ではいかない俳優です。こういう癖のある訳をやらせたら
天下一品。野卑ではあるが、頭が切れ、他人を引き付ける男をリアルに演じています。

それから、ジュード・ロウ。実は大好きなんですう。このところ公開作が立て続けにあるので
うれしくてしかたない。どんな役でもいい男はいい男ですが、特にこのような、お育ちがよく
ナイーブで悩めるジュードは絵になります。もちろん、いい役者ですよお。(^^ゞ