こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956」

“愛、自由”という原題の通り、直球勝負のズシンとくる映画です。

ソ連寄りの独裁的な共産政権下のハンガリー水球のオリンピック代表選手カルチは
民主運動に身を捧げる女子学生ヴィキに出会います。それまでは水球と家族のため
政治的なことには距離を置いてきたカルチでしたが、彼女に出会い動乱にまきこまれ、
悩みながらも戦いに身を投じていきます。一度は民主派が勝利し、カルチはオリンピック
開催のメルボルンへと旅立っていきますが、一度撤退したはずのソ連軍がブダペストに戻り
アメリカは状況を静観。ハンガリーは再び動乱となっていきます。

1956年といえば、日本なら貧しいながらも高度成長が始まって、平和といえる世の中になった
ころです。世界では、第二次世界大戦が終わった後も、このような悲劇があちこちで
あったのです。ハンガリーポーランドなどの東欧諸国や朝鮮半島は、東西冷戦の
犠牲になった場所ともいえるでしょう。ベルリンの壁は崩壊し、冷戦の一翼であった、
ソビエト連邦はなく、今や歴史上の事実としての認識になりつつありますが、
冷戦による暗黒の時代を生き延びてきた人たちもまだ大勢いるわけです。動乱から50年、
時代を生き抜いてきた人たちは、どのような思いでこの映画をみたことでしょうか。

“自由の国に生まれた人にはわからない...”という一文が、最後に紹介されます。
自分のために自分らしく生きることすらできなかった時代の人たちを思い、
今の自分がこのようにいられることに、感謝したくなりました。