去年カンヌのオープニングを飾った、ウォン・カーワイ作品。舞台はNYで
ハリウッドでおなじみの俳優達が出演している映画ですが、フランス・香港
制作の映画なんですねー。
内容はとっても、ウォン・カーワイの色です。「欲望の翼」や「恋する惑星」
「天使の誘惑」「ブエノスアイレス」を思わせるフレームワークや登場人物が
ちりばめられています。そして、切ない恋も。監督は、自分のこの持ち札を
異文化の中でやりたかったのではないでしょうか。味付けは欧米向けに
ちょっと大味かもしれませんが、ブルーベリーの甘酸っぱい風味が広がって来ます。
主人公のエリザベス、失恋で我を忘れている様は「天使の誘惑」を、
若い歌姫(ノラ・ジョーンズ)を抜擢したのも、自分探しの旅に出るのも
「恋する惑星」を思わせますが、彼を待つカフェの男(ジュード・ロウ)も
しかり。自分自身を見失っている状態の時に、こんないい男が待っていてくれる
なんて、なんてラッキーなのっ!
自分を探す旅で出会った人たちも、周りがみえずに我を忘れている。別れた若妻に未練を
抱く男と、別れた夫の束縛から自由になりたい女。足のない鳥の如く、その日
暮しのギャンブラーの女は、上手くいっていなかった父を失う。そんな人たちを
見ながら、エリザベスは自分を取り戻していくのです。
ノラ・ジョーンズは、演技力というよりは、まだ演技に色が付いていない感が
いろいろな出来事を吸収していくエリザベスの役にぴったりでしょう。ジュード・ロウの
せつない顔は、また美しい。
そして、デビッド・ストラザーンも、レイチェル・ワイズも、ナタリー・ポートマンも、
長めのカットで、切なく泣きます。思わず肩を抱いて慰めたくなるほど、いい演技でした。