こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「愛の十年」 A Decade of Love 十分鐘情

イメージ 1

[アジアの風]部門 10月24日上映

中国返還から10年を経た香港。十年の思いを10人の監督が9編の短編で綴ったオムニバス映画。
プロデューサーのウイリアム・タム、オーブリー・ラム監督、出演のスティーブン・チュン、
エンジェル・ホーが来日しました。

それぞれの短編は、様々な形の“愛”をテーマに個性豊かに綴られています。10年前に
結婚しこの5年別居を続けていた夫婦の孤独がモノトーンで描かれ、植物人間になった
家族の悲しい現実と希望がラース・フォントリアーのような書割のセットの中で
描かれています。ろくでもない子供たちでも、何があっても守るのが親の務めだと語る
年老いた夫婦。彼らの家で起こることが、13分間の長回しで一気に取られています。

湾仔で40年前に出会った友人を探す男と、子供の出産祝いの赤い卵を渡すために
昔の恩師を探すタクシードライバー。獅子山の精に連れ出され、元気を取り戻す自閉症
女の子。お金で愛情を図る女と男。香港の風景と、時の流れが交錯し、とても香港ローカルな
映画になっていますが、テーマとしての“愛”は誰が見ても普遍なものでしょう。

プロデューサーのウィリアム・タムさんは、香港では今映画を見る人口が減っており、
短編という手法で客を呼び戻し、映画界を盛り上げられればと語っていましたが、
出資は中国から受けているそうです。10人の監督による作品が9編の映画になってしまった
のはその辺にあるようで、最後の一編を中国国内の検閲に通るように編集しなおすのには
時間がかかりそうなので、その一編は断念したという話です。

先日見たパン・ホーチョン監督の映画は、同じように愛をテーマに短編を集めた映画では
ありますが、鼻から中国の検閲に通ることを念頭に置いていませんでした。だからこそ
パン監督の映画には出資が集まりにくいのでしょう。同じように香港をテーマに
取る映画でも、制作側の考え方や方法論で違ってくるものだなと思いました。

私個人としては、どちらも生の香港の風景、香港の出来事、香港の人たちの事を
感じ取ることができるようで、とっても楽しめました。

来日したラム監督は最初の別居夫婦の話を監督。スティーブン・チュンは
年老いた夫婦のろくでもないドラッグ中毒の息子を、エンジェル・ホーは擬人化した
獅子山を描く自閉症の女の子を演じていました。