「ダーク・ハウス/暗い家」 The Dark House
コンペティション出品作品
2009年 ポーランド
監督・脚本:ヴォイテク・ソマルゾフスキ
出演:アルカデュシ・ヤクビク、マリアン・ジエドジエル、バルトウォミエイ・トバ
<あらすじ>
1978年、地方の農場勤務が決まった男が、夜ある農家に立ち寄る。そこで、もてなしてくれた
夫婦と意気投合するが、そのあと悲劇が起こる。
4年後、警察がその夜の事件を解明しようとするが、上層部はその事件から明らかになる不正を
隠ぺいしようと圧力をかけてくる。
映画祭では必ず、普段見ることのない国の映画を一つは見る様にしています。まだまだこの世界には
知らないことや気付かないことがたくさんあるのだとわからせてくれるから。この映画は
今年のコンペのなかで選んだ作品。ポーランドの映画です。
この映画、地方の農家で起きた殺人事件を通して見ることができるという、思ってもみないような
ユニークな視点のサスペンス映画でした。
映画の中では、1978年の夜の事件と1982年の昼間の事件現場検証の2つの時間が並行して
描かれています。1978年は、共産党時代の最後の時代。1982年は、戒厳令下の時代。
すでに「連帯」が結成され、国民が民主化運動に向かいつつあった時代。ポーランドにとって
重要な社会変化が起きつつありました。この“暗い”時代に生まれ、学生として時代を
体験したソマルゾフスキ監督にとっては、“決着をつけたい時代”なのだそうです。
1978年の夜の暗さは、そのまま時代の暗さを表しているといっていいのでしょう。始まりは
ちょっと滑稽でもあった農家の夫婦と男の出会い。それが、酒が進むとともに、酒に飲まれる様に
現実が悪夢に飲み込まれる。
1982年は昼間の出来事であり、トーンは明るい感じでもあります。でも、だんだんと見えてくる
現実は、ソ連の影響下であったり、上層部の圧力であったり、社会矛盾、ひそかに裏切り合う人たち
など、決して明るい現実ではありません。そして、ここにも悲劇が訪れる。でも、2つの時間の間には
確かにはっきりと違う“境界線”があるのです。そして、新しく生まれてくる生命があるのです。
映画を通して、登場人物の大半がずーっと酒を飲み続けている。密造酒だったり、決められた
時間にだけ買うことのできるお酒だったり。そして、映像の視点も、揺れ続ける。私は、
ポーランドの人ってこんなに毎日酒を飲み続けるのかと思ってびっくりしましたが、
監督いわく、それはこの時代に限ったことであったそうで、いまはそうではないということです。
国中が、酒に飲まれていた時代。ある意味、飲まずにはいられなかった時代なのでありましょう。
ポーランドは、長い歴史の中で分割・統合を繰り返し、不幸を乗り越えてきました。
その歴史について、社会情勢について、知らなければ、解らないこともある映画ではありますが、
知ることによって、新しい視点を持つことができます。それが、映画を見ることの面白さの
一つでもあるでしょう。
2009年 ポーランド
監督・脚本:ヴォイテク・ソマルゾフスキ
出演:アルカデュシ・ヤクビク、マリアン・ジエドジエル、バルトウォミエイ・トバ
<あらすじ>
1978年、地方の農場勤務が決まった男が、夜ある農家に立ち寄る。そこで、もてなしてくれた
夫婦と意気投合するが、そのあと悲劇が起こる。
4年後、警察がその夜の事件を解明しようとするが、上層部はその事件から明らかになる不正を
隠ぺいしようと圧力をかけてくる。
映画祭では必ず、普段見ることのない国の映画を一つは見る様にしています。まだまだこの世界には
知らないことや気付かないことがたくさんあるのだとわからせてくれるから。この映画は
今年のコンペのなかで選んだ作品。ポーランドの映画です。
この映画、地方の農家で起きた殺人事件を通して見ることができるという、思ってもみないような
ユニークな視点のサスペンス映画でした。
映画の中では、1978年の夜の事件と1982年の昼間の事件現場検証の2つの時間が並行して
描かれています。1978年は、共産党時代の最後の時代。1982年は、戒厳令下の時代。
すでに「連帯」が結成され、国民が民主化運動に向かいつつあった時代。ポーランドにとって
重要な社会変化が起きつつありました。この“暗い”時代に生まれ、学生として時代を
体験したソマルゾフスキ監督にとっては、“決着をつけたい時代”なのだそうです。
1978年の夜の暗さは、そのまま時代の暗さを表しているといっていいのでしょう。始まりは
ちょっと滑稽でもあった農家の夫婦と男の出会い。それが、酒が進むとともに、酒に飲まれる様に
現実が悪夢に飲み込まれる。
1982年は昼間の出来事であり、トーンは明るい感じでもあります。でも、だんだんと見えてくる
現実は、ソ連の影響下であったり、上層部の圧力であったり、社会矛盾、ひそかに裏切り合う人たち
など、決して明るい現実ではありません。そして、ここにも悲劇が訪れる。でも、2つの時間の間には
確かにはっきりと違う“境界線”があるのです。そして、新しく生まれてくる生命があるのです。
映画を通して、登場人物の大半がずーっと酒を飲み続けている。密造酒だったり、決められた
時間にだけ買うことのできるお酒だったり。そして、映像の視点も、揺れ続ける。私は、
ポーランドの人ってこんなに毎日酒を飲み続けるのかと思ってびっくりしましたが、
監督いわく、それはこの時代に限ったことであったそうで、いまはそうではないということです。
国中が、酒に飲まれていた時代。ある意味、飲まずにはいられなかった時代なのでありましょう。
ポーランドは、長い歴史の中で分割・統合を繰り返し、不幸を乗り越えてきました。
その歴史について、社会情勢について、知らなければ、解らないこともある映画ではありますが、
知ることによって、新しい視点を持つことができます。それが、映画を見ることの面白さの
一つでもあるでしょう。