こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「麦田」 麥田

アジアの風部門
2009年中国作品
監督・脚本・プロデューサー:ハー・ピン
出演:ファン・ピンピン、ホアン・ジエ、ドゥ・ジアイー、ワン・シエチー

<あらすじ>
戦国時代、趙の邑では男たちはすべて戦場に出てしまい、女と老人、子供だけが残されて生活している。
ある日、敵方の秦の兵士が川に打ち上げられて助けられる。男たちは、趙の男であるふりをし、
趙が秦に勝利したと嘘をつく。盗賊から邑を守った事件の後、男たちの嘘が発覚。やがて秦の大軍が
邑を包囲する。

「双旗鎮刀客」「哀戀花火」で知られる、ハー・ピン監督の作品。戦争の混乱と麦畑、静寂と狂気の
コントラストが美しい作品でした。

戦争映画といえば、戦争そのものに参加する男たちの物語になることが多いですが、この映画では
逃亡兵と残された女たちという、戦争の裏側にいる人たちが主人公となっています。いつの時代でも
彼らのような、表には現れない人たちの人生があるのです。監督は、あえてそういった人たちに
スポットライトをあてたのだそうです。そして、彼らももちろん戦争の悲劇に巻き込まれているのです。
やはり、戦いは何も生むことはなく、失うだけだということを痛感します。

逃亡兵が助けられて邑に留まる最初のあたりは、ちょっとコミカル。でも、村の女たちの
何も知らないがゆえの明るさが、だんだん怖いものに思えてきます。主の妻と彼女に使える巫女だけが
何かを感じ取っている。彼女らは無力にすら見えますが、できることがそれほどあるとも思えない。
結局男たちも、女たちとそんなにかわらないようにも思える。残酷な運命に翻弄されながら最後に
見る物は、何なのでしょう。

上映後のティーチ・インでの質問に、監督はこの映画を撮影するに際し、時代考証をかなり念入りに
行ったというような事を答えていました。戦士の鎧は兵馬俑などから研究し、当時まだズボンが
なかったので、男はお尻が割れたようなものをはいていたそうです。人々は板の間の上に直接
座って生活をしています。(椅子を使うようになったのは、宋代のことなのだそうです。)
服は、麻の重ね。2000年前の話とは言え、日本人には、かえって違和感のないものです。
もちろん、こういった生活様式や服装は、後に日本にもたらされ影響を及ぼしたのだと思いますが。

その他にも、巫女が行う儀式やら、市井の人々の生活の様子やら、とっても興味深い。
そんな風に映画を見ていたら、今まで読んで来た春秋時代や戦国時代の小説のが
なんだか色鮮やかになってきたような気がします。

主演は「墨攻」や「新宿インシデント」のファン・ピンピン。この人やっぱり、きれいだわー。
逃亡兵役のホアン・ジエ、ワイルドで良かったです。アクションシーンはあまり多くはありません
でしたが、ワン・シエチー演じる盗賊の頭目との戦い、キレがあってよかったです。