こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「メアリーとマックス」 Mary and Max

ワールドシネマ部門出品作品
2008年オーストラリア
監督・脚本・人形デザイン:アダム・エリオット
声の出演:トニ・コレットフィリップ・シーモア・ホフマン
      バリー・ハンフリーズ、エリック・バナ

今年の東京国際映画祭、最後に見た作品です。

メルボルンに住む、ちょっと太めでコンプレックスの塊の8歳の少女メアリーと
ニューヨークに住む肥満体で自閉症アスペルガー症候群)の44歳のユダヤ
マックスが、20年に渡って文通をします。少女が思春期を迎える課程と、
男が老年期を迎える課程で、それぞれが自分自身を受け入れ、紆余曲折の中
本当の友情を結ぶという話です。

オーストラリアの映画には、社会の主流から外れた辺縁部にいる人たちを描いたものに
良い作品がありますが、これもその一つになりますね。いじめられっ子で、家庭の温かさにも
いま一つ恵まれない女の子と、社会と折り合いをつけて生きていくことが難しい男。
そんな二人を、世間への皮肉とユーモアたっぷりに描いています。

女の子の目線は、私にも多少は経験のあること。よくわからない大人の理屈や、
いじめっ子にいじめられる理由。孤独感。そして、自信のない初恋...。良くわかります。

男の目線については、その病気のためにどのように世間に理解されないのかということが、
初めてわかりました。人の表情が読み取れない彼にとっては、世間の人々が彼に向ける視線に
どう対処してよいかわかりません。何も言わずに自分の世界にずかずかと入ってこられる。
彼にとっては、理不尽以外の何物でもありません。そして、彼に解決できない問題が
突きつけられると、パニックに陥る。人はそれを異常と呼び、病院に入れられてしまうのです。

いずれにしても、世間一般の人々の視点が、正しいわけではないと語っています。
それがわかれば、人間はもっと優しくなれるのかもしれません。

人形アニメでコマ撮りのため、6名のアニメーターと50人のクルーを使っても一日4秒分しかとれず、
完成までに5年の歳月を費やしたそうです。でも、今年のアヌシー国際アニメーション映画祭では、
グランプリを獲得しました。色使いは抑えているものの、人形の表情や、ニューヨークやメルボルン
郊外の風景に、リアルな虚無さと同時に、なんともいえない温かみがあります。

声優陣も、トニー・コレットフィリップ・シーモア・ホフマンエリック・バナなど
ハリウッドで活躍する味な俳優さんたち。個性的なキャラクターにいい味を加えています。

ちょっと残念なのは、ブラックなユーモアが字幕だけではわかりにくいこと。
肺炎で亡くなったおじいさんが、アンモニア飲んだっていうのとか、いくつかありましたが
これは字幕の難しさですねえ。

それから、オーストラリア人の生活や嗜好が(皮肉を交えて?)描かれていますが
これも画像からだけでは理解しにくいかも。日本人になじみのない固有名詞も訳されていません。
字幕としては、ちゃんと成り立っているので仕方がありませんが。

いずれにしても、もう一度ゆっくり見てみたい作品でした。