こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

TIFF ワールド・フォーカス 「シチリアの裏通り」 Via Castellana Bandiera

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2013年イタリア作品
監督:エンマ・ダンテ
出演:エンマ・ダンテ、アルバ・ロヴァルケル、エレナ・コッタ
   レナート・マルファッティ、ダリオ・カザローロ
 
シチリアの、細い裏道。ローマから来た二人の女性が乗る車が、地元の
家族を乗せた対向車に道をふさがれる。パレルモ出身で複雑な思いを抱えた
ローザ。亡くなった娘が嫁いだ先の家族と暮らすアルバニア系のサミーラ。
二人は理解不能な意地を張り合い、道を譲らない。やがて近隣を巻き込んだ
騒動に...。
 
なかなかこんな映画は見たことはありません。狭い場所で延々と続く
ふたりの女の心理戦。それぞれの登場人物が抱える問題。車を取り巻く
南イタリア気質の人々。分かりにくい話ではないのに、隠喩的な要素や
観客にゆだねられた解釈が、妙に後味として残る映画でした。
 
Q&Aにいらしたのは、エレナ・コッタ。この石のように動かない老婆役で
ヴェネチア映画祭の主演女優賞をとっています。難役だったのではという
質問に、“靴職人が靴を作る”様に、”俳優として役を演じる”
ことができたそうです。長年の経験の蓄積が、職人技となっているのですねえ。
 
裏道について。最初はイタリア人がよく乗っているような小型の自動車が
やっと一台通れるぐらいの道で、2台の車が鉢合わせをするのですが
エンディングになると様子が変わってきます。同じところのはずなのに。
これには、二人の意地の張り合いだけでなく、広い意味で争いは避けられる
はずであるということを、表現しているということです。
 
最後に何も無くなったこの道に、走ってやってくる大勢の人々。
延々と続くこのシーンも、印象的。何かを考えずにいられない。
 
観ることによって、考える時間を与えられる。純文学のような作品でした。