こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「長江哀歌」 三峡好人

2006年ベネチア映画祭でサプライズ上映でコンペ作品として上映され、
金獅子賞に選ばれた、ジャ・ジャンクー監督の作品です。

16年前に家を出た妻と娘を探しに、山西省からやってきた男。
出稼ぎに出て、2年前から音信不通の夫を探しにやってきた女。
彼らがやってきた奉節という街は、二千年の歴史を持つ古都だが
いずれダムの水の下に沈む運命にある。

男が働く解体現場の人たちや、安宿に宿泊しているチョウ・ヨンファに
あこがれる若い男。年老いて自分の居場所を失う安宿のご主人。
片腕をなくした工場労働者とその妻。彼ら市井の人々の生活や人生は
川の流れに飲み込まれていくように、はかなく移ろいやすい。
それぞれの人生は生々しくもありますが、かといって大げさに描かれて
いるわけでもありません。彼らは流されながらも、自分で人生を選んで歩ん
でいくのです。

男は妻に出会う。女は夫に出会う。お互いの間の微妙な距離感。
多くは語りませんが、気持ちが伝わります。

そして、人々のリアルな営みの間で時々おこるシュールな出来事。
なんと取ればいいんだろうと一瞬とまどいましたが、あれだけの街が人の手で
破壊され水に沈んでゆくということほどシュールなことはありません。他に何が
起きてもおかしくないのです。現実が一番現実離れしてるように見えるのです。

リアルとシュールを眼の当たりにしながら、新しいものが次々に作られて
いく裏で、たくさんの物が破壊されていくこと、時代は様々なものを巻き込みながら
河のように流れていくけれど、それでも人間の生は悠久に続いていくことを思いました。