こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「モンゴル」 Mongol

ここ20年程の世界の変化を如実に感じます。ちょっと前まで、ロシア人にとっては極悪非道の
征服者、社会主義体制にあったモンゴルでも語ることをはばかられた、チンギス・ハーン
物語を、ロシア人監督の下、ドイツ・ロシア・カザフスタン・モンゴル、アメリカ、中国、韓国、
香港、日本等々のキャスト・スタッフで制作したのです。

チンギス・ハーンといえば、アジア大陸を征する大帝国を築き上げた人物ですが、その
半生は過酷なものでした。後のハーンであるテムジンは、幼い頃部族の長である父を亡くし、
同族のタルグタイに財産を奪われ命を狙われる。逃亡しては捕まり、捕まっては逃亡する
という生活の中、少年ジャムカに出会います。

組織よりも、自分の力量が重要なこの草原の世界。力あるものだけが生き残ることが
できる世界。力があれば自由もあるが、そうでない者には厳しい世界でしょう。
テムジンは、統率者としての力量があると同時に、弱者としての経験もある。
だからこそ、それまでと違うモンゴル人の社会を求めたのかもしれません。
セルゲイ・ボロドフ監督は、続編も考えているらしいですが、是非とも大ハーンと
なったテムジンが、中華文化などの外の世界に触れどう変わっていくのか、何を考えて
帝国拡大を進めて行ったか、見てみたいです。

主演の浅野忠信は、周りのモンゴル人よりは華奢に見えますし、風貌的にはもモンゴル人ぽく
ないのですが、その違いがチンギス・ハーンとしての孤高と抜きん出た才能を際立たせています。
彼のモンゴル語が上手いのかどうかは解かりませんが、言葉少ない中での表情は、あ抑え目ですが
出色です。

もう1人他と違う風貌なのは、ジャムカ役の中国人俳優、スン・ホンレイ
ジャムカは、腕力は人一倍で知恵もあるが、己の権力を追求するには手段を選ばない男。
この人のこんな姿、どっかで見たことがあるなあと思っていたら、「セブン・スウォード」
でした。絶対、役かぶってると思います。でも、この方「初恋の来た道」やら
たまゆらの女」なんかでは、一転した演技を見せていますから、実は多才な
俳優さんなのでありましょう。

時代と空間のスケールに圧倒されながら、私はこの時代に生まれていたら、絶対
生き延びていないだろうなあと、思ってしまいました。