東銀座。橋をはさんで歌舞伎座のはす向かいにある映画館東劇は、最近すっかり
舞台芸術の映画を上映する映画館となっています。メインはもちろん歌舞伎。
そのほか、メトロポリタン歌劇団のオペラなんかも上映しています。
今日見たのは、坂東玉三郎主演の昆劇「牡丹亭」。2008年北京と京都で公演、
大成功をおさめましたが、今回の映像は、2009年3月昆劇の本場蘇州での公演の模様を
製作ドキュメンタリーと舞台の模様を2部構成で映画化したものです。
この映像を見てつくづく思ったのは、役者の仕事というものは日々の鍛練と
技術の積み重ねによってできているものなのだということ。歌舞伎と昆劇という
一見、言葉も動きも全く違う表現の芸術ですが、彼が長年つちかってきたものが
すべての土台となっているのがわかります。練習中のひとつひとつの動き。
若い俳優たちと全く質が違う。一朝一夕にできあがるものではないのです。
舞台の映像では、玉三郎演じる杜麗娘の美しいこと。夢の中の若者に恋して死んでゆく
深窓の令嬢にしては妙に妖艶ではありますが、悲しく切ない。圧倒的な存在感です。
他の役者で「牡丹亭」を見たこともないし、蘇州なまりも解らないのですが、
日本人がやっているという違和感も全く感じられません。中国でも、「梅蘭芳が
よみがえったようだ」と大絶賛だったよです。
妖艶なお嬢様に比べると、恋するお相手の柳夢梅はちょっと能天気なキャラクター。
悲しいお話とおもいきや、道士様みたいのが出てきて、ええっと思うようなハッピーエンドの展開。
こんなところに、大衆演劇としての歌舞伎と昆劇の共通点が見えるような気がします。
ドキュメンタリーの中で、南京大学での講義の模様が出てきます。一人の学生から
レスリー・チャンと交流があったようですが、という質問がありました。そのなかで、玉三郎は
「役者の仕事には華がたくさんあるけれども、華の数だけ苦しみもある。」ということを
レスリーに話した、と語っていました。二人には、役者として何か通じ合うものがあったのでは
ないかと思いました。
割引一切なし2,000円ですが、見る価値ありますよ。
http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/botantei/index.html