こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「欲望の翼」 阿飛正傅 Days of Being Wild

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1990年 香港作品
監督・脚本:ウォン・カーワイ
撮影:クリストファードイル
 
一人の人間にはいろいろな面があって、他人が見るのはその一部だけである。
自分が見ることのできる現実に沿った側面だけ。
 
主人公のヨディ(レスリー・チャン)は、女たちから見たらずいぶん薄情な男である。
彼がひとところにとどまれず、刹那的であるのは心の中にある大きな隙間のため。
女たちには見ることのできない、彼の側面。
 
彼も、彼の義母も、本当の母親も、船乗りになった警官も、皆心のどこかに埋められない
場所がある。その心のうちの隙間をはきだすことが出来るのは、女だけである。
 
ウォン・カーワイの作品は、映像が際立っており、分かりにくさから当時の香港ではあまり
受け入れられないところがあったようだ。その後の作品なんかも、台本がなくてその場に
ならないと分からないという話も聞く。でも、改めてこの作品を見ると、彼は脚本家だったんだなと思う。
忘れられない台詞を数多く残している。
 
~ヨディがスーを虜にした、“君といた一分間”。
 
~ヨディが独白で語る“生きている間は飛び続け、死ぬときにだけ地上に降りる足のない鳥”。
 
言葉なしには、この映画を思い出すことができない。
 
レスリー・チャンが亡くなって、今年で10年。彼にも、いろいろな面があり、映画で語られる
“足のない鳥”のように、最後に地上に降りた。彼は、ヨディが言うように、最期に何かをみたのだろうか。