1997年 香港映画
監督・脚本:フルーツ・チャン
エグゼクティブ・プロデューサー:アンディ・ラウ
出演:サム・リー、ネイキー・イム、ウェンダース・リー、エイミー・タム
4Kレストア・デジタル・リマスター、見てきました。
もともと、低予算で期限切れのフィルムかき集めて作ったような
インデイーズ映画で、場面場面で色のトーンが変わったり
粒子が粗かったりして、またそこが印象的だったりしたんですが
その味を損なうことなくリマスターされていました。
そして、ほぼ20年ぶりに劇場でみたこの映画、時代を経ても
全く古さを感じることのない、シャープな出来上がりに
改めて舌を巻いたのでありました。
社会からこぼれ落ちた若者たちがおかれる厳しい環境と、焦燥、鬱屈した
心情を描いた映画はたくさんありますし、この歳になると距離を置いて見て
しまうものなのですが、この映画は本当に引き込まれます。
いや、20年前以上に前のめりで観てしまいました。
自分がこの20年歳を重ねて、年代経験の幅が広がったこともありますが
香港の20年も一緒に見てきたこともあるのかもしれません。
チャウもペンもロンも、若さゆえというだけではない背景が
それぞれの面構えに現れています。それは、返還直前の
香港の不安と重ね合わさった。それがこの映画独自の色となっています。
彼らが暮らす公屋(公団住宅)、部屋の窓から見えるアパート群、
自殺した女の子が立つビルの屋上から見た街、どこにも彼らの居場所が
あるように見えない。郊外の山の斜面にある巨大墓地だけが
彼らを笑顔にしたかもしれない。でも、そこには死が忍び寄っている。
道路に流れる血も、現実と空想が錯綜するピークトラムでの場面も
一つ一つの場面が目の裏に焼き付きます。
20年前のものであることを感じることがあるとすれば、ポケベルと
若干見えてくる大陸との関係でしょうか。この辺は、フルーツ・チャン監督の
香港三部作を改めて見直すといいかもしれませんね。
そういえば、1997年前後の香港映画は、様々な形で香港の今を
描いた映画がありました。こちらも改めて見直して見たいと思います。