2019年 アメリカ作品
製作: デビッド・バーン、スパイク・リー
監督 : スパイク・リー
第4波に入るひと月ほど前に、「アメリカンユートピア」観てきました。やっぱり劇場で見る映画は良いですね。この映画自体は、オフブロードウェイで上演されたライブ映像なのですが、臨場感たっぷりです。
デビッド・バーンは、元トーキングヘッズのリーダで、音楽や映像、イラスト、写真などマルチ才能を持つアーチスト。ジョナサン・デミ監督の1984年のライブ映画「ストップ・メイキング・センス」は、ラジカセ一つ持って登場したデビッド・バーン「サイコ・キラー」を歌うところから始まり、シンプルながら変化していくセットと、黒い背景に浮かび上がる演出は刺さりました。当時ミニシアターで見たのですが、リアルにライブ会場の中に入り込んだ感覚が強烈でした。
この映画、2018年に発表された同名のアルバムを2019年にブロードウェイのショーにしたものを、スパイク・リーが映像化したものです。
デビッド・バーンが脳の模型を持って人間の脳神経について語りはじめ、ショーのMCをつとめるような形で、トーキングヘッズ時代の曲を含むライブミュージックのショーが構成されます。ちょっとシニカルな語り口と、無意味なようでウィットに富んだ歌詞が、アメリカのかかえる問題を表現していきます。
エンターテイメント性は抜群で、マーチングバンドを意識したようなバンドの動き、様々な地域の意識した音楽やダンス、そして最初から最後まで喋って踊って歌い続けるデビッド・バーン。年を経て「ストップメーキングセンス」の頃とは違う彼の顔が見えてきます。
そして、映画の根底にあるのは、多様性。分断の状況にある世界へのメッセージでした。
デビッド・バーン自身は、子供の頃からスコットランドから家族と共にアメリカに移住してきた人。彼のステージや音楽には、様々な地域や人々の文化が取り込まれています。
スパイク・リーは言わずと知れた、'80年代に登場したインディーズ映画の監督。アフリカ系アメリカ人で人種問題を扱った映画を多数監督しています。
バンドのメンバーも、ルーツは様々。
トランプ政権真っ只中の2018年当時、人々のコミュニケーションや、人種問題、選挙の重要性、世代や国を超えた現代を生きる人々に問題を提起します。
この世界的な災禍の中で、劇場で上映できているのは日本だけなようです。こんな時期にお勧めするのもなんですが、機会があれが、是非一見くださいませ。