こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

TIFF ダラス地区

コンペ作品のルーマニア映画です。

映画監督には、話を始めるとほんとによく喋ってくれる方がたくさんいて、「ダラス地区」の
監督もまったくそんな感じでした。もっとも、人に伝えたいことがたくさんあるから、映画
監督になるんだろうけど。

この映画は、ルーマニア廃棄物処理場に住む貧しいジプシーのお話です。このテーマを扱うことが
ルーマニアの政府には面白くなかったらしく、2度も政府によるストップがかけられ、2度目は
軍隊まで出動してロケ地を放棄せざるをえなかったそうです。そこで、同じセットをハンガリー
作り上げ、3年近くもかけてやっと完成させたそうです。完成後も、プロデューサーの破産やら
スタッフが環境破壊罪(なぜ?)で逮捕されたり、山あり谷ありでやっと上映にこぎつけた事を、
来日した監督とプロデューサーがティーチインの時間いっぱい、熱く語っていました。

この映画で、ごみの山の土地が“ダラス”と呼ばれています。そして、そこで人々はアメリ
ドラマ“ダラス”を見ています。これは、貧富の対極としての表現と思いきや、この両極の
社会が、消費社会としてつながりをもっていることを表現したということのようでした。
また、こういうごみの山が彼らジプシーにとっての宝の山であるという意味で、実際“ダラス”
と呼ばれているんだそうです。

私たちの目からみれば、貧しく絶望的な社会。弱いものは危険にさらされ、搾取や虐待の
対象になっていきます。そんな、つらく悲しく切ないことばかりのジプシー社会でも
人々の生活の営みは続いていくのです。いい映画でした。