こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「キャピタリズム~マネーは踊る」 Capitalizm : A Love Story

2009年アメリカ作品
監督・脚本・製作:マイケル・ムーア

以前から思っていたのですが、どうしてアメリカにはヨーロッパのような
社会民主主義的な考えというのがあらわれてこないのかという疑問があったのですが、
この映画でその理由の一端を垣間見たような気がします。資本主義は、アメリカの
プロパガンダ”であり、国民はその洗礼を受けていたのです。“自由競争”や
“利潤動機”は良いことであり、だれでも頑張れば成功できる。そう刷り込まれて来たものの
現実は国民の1%の富裕層が底辺の95%の人たちよりも多い富を所有する社会になってしまったのです。

マイケル・ムーアキリスト教徒で、GMの工場で長年働いた父親に専業主婦の母親を持つ
普通の中産階級に育った人です。彼が育った地域の教会の神父に聞いても、さらにその上の
司祭に聞いても、富める者だけが富むという状況は、キリスト教の教義にはありえない“悪”なのです。
また、“民主主義”の根本である、アメリカ合衆国憲法にも、“資本主義”については、
何も記載がない。では、なぜ、このような社会になってしまったのでしょうか。

オープニングは、イギー・ポップの曲にのり、銀行強盗が繰り返される、ムーア監督らしい
エキセントリックさですが、その後はなりを潜めます。普通の人々が、住む家を追い立てられ
職場を失う。パイロットのような専門職でさえ、それだけでは生活できない。
暗くてせつないシーンが続きます。

そして、一般市民に高い金利でお金を貸し出し、一部の金持ちには特別優遇金利
融資をするカラクリ。普通の人にはわけのわからない金融商品で、お金をころがす人たち。
サブプライム・ローンの崩壊、リーマンショック。その不安を恐怖に変え、大銀行だけ
救済される政府案を可決させる手口。そして、ほかの国の人々が持っている当然の
“権利”や“保障”のないアメリカに住む人々。映画の手法は、「華氏911」と変わらない
切り口です。

この映画、アメリカの社会問題をえがいておりますが、日本人としては、決して人ごとと
思って見てはいけません。同じ轍を踏むことのないように。