こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「ゆれる」

やっと見てきました。でも、なんか消化不良なんだよな。映画見る前に
お腹いっぱい食べ過ぎたせいかなあ。

兄弟の葛藤というのは、聖書の昔ではカインとアベル。映画では「エデンの東」から
「レジェンド・オブ・フォール」まで、人間の普遍的テーマのひとつでしょう。
真面目な兄と奔放な弟。弟は、兄が持つものが欲しい。兄は、弟に奪われると
感じる。幼いときは仲のよい兄弟だったのに、成長するにつれだんだんと
ずれていき、修正されることが難しくなっていくのです。これって、男兄弟の
間だけかと思いきや、友人いわく姉妹の間でもあるようです。同姓の兄弟
姉妹の間にはには、どこか自分が損をしているみたいな感覚があるのでしょう。

「ゆれる」では、真面目で不器用で田舎を出られない兄(香川照之)と、東京で成功し
自由に生きる弟(オダギリ・ジョー)の間にその葛藤が生まれます。兄が切り盛り
しているガソリンスタンドで働いている女性が渓谷のつり橋から転落死したことにより、
兄が刑事被告人となってしまいます。つり橋にいた兄と女の間に何があったのか、
弟が見た現場が本当は何だったのか。結局最後まで、兄も弟も、真実を、そして本心を
語ったようには見えないのです。結論は観客に委ねる、ということなのでしょうか。
2人の間の深い溝は、簡単に埋まることはないということなのでしょうか。女1人の
命でそれを埋めたとしても、代償は大きかったに違いありません。

決して本心を語らず、時には不気味な薄笑いさえ見せる複雑なキャラを演じる
香川照之の演技には演劇的な凄みを感じます。一方オダギリ・ジョーは、馴染めない
生まれ故郷に複雑な心境をもち、都会で自由奔放に生きる弟を、演じているという
ような力みのない演技を見せています。この2人の演技へのアプローチの違いが
2人のキャラの違いと“ゆらぎ”を生んだと見るか、ミスマッチと見るか。
それも観客次第かもしれません。