イラン出身のマルジャン・サトラビの自伝的グラフィック・ノベルを
原作にした、アニメーション映画です。
1978年9歳のマルジは、家族の愛情に恵まれ何不自由のない暮らしをしている
ブルース・リーになりたいと思っている女の子。そんな頃、社会には不穏な動きが
起こり始め、彼女の家族も生活も翻弄されていきます。
この映画を見て、物事には色々な側面があることを、改めて思い直した感じです。
イランといえば、イスラム革命、原理主義、厳しい戒律、戦争、テロなどと
いったイメージでしか、テレビニュースからは伝わってきません。でも、この映画の
主人公マルジは、私たちとはそんなに変わらない、自由を愛し、ユーモアと憧れと反抗心を
持った女の子です。ロックが好きで、恋もおしゃれもする。そして家族の愛情もまた、世界の
どことも変わらない。彼女らの置かれた環境は時に悲しく、時に苛酷ではありますが、
そんな中でも迷いながらも自分を見失わないように成長していくのです。。
“ペルセポリス”とは、ギリシャ語で“ギリシャの都市”ということ。アケメネス朝
ペルシャの時代に繁栄した都市でしたが、アレクサンダー大王の攻撃によって廃墟と
なった所です。マルジの育ったテヘランも、かつて華々しい文化が栄えたところであり
戦争で踏みにじられた場所。でも、人の営みは続くのです。
当たり前のように自由と平和のある私たちには、遠いテーマのように聞こえてしまいますが、
マルジという等身大の主人公によって、まるで身近な自分の友達の話のように思えます。
装飾を抑えたモノトーンのグラフィックも、特定の異国を想起させずに、人ごとでなく
感情移入できるような気がします。
それから、なんといってもマルジのおばあちゃん、イラン版の“かばいばあちゃん”です。
おしゃれでお茶目なリベラル派。時に優しく時に厳しく。彼女の一言一言には、ズンと心に
響くものがあります。
“だれかに傷つけられたら、相手が愚かだからと思えばいい。そうすれば
仕返しせずにすむ。復しゅうほど最悪なものはない”
“自分に公明正大になりなさい”
“恐れが人を卑怯にする”
本も読んで見たくなりました。