こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「8月のランチ」 Mid-August Lunch

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[コンペティション]部門 イタリア作品 10月26日上映

コンペ作品のイタリア映画。監督・主演のジャンニ・ディ・グレゴリオさんが来日しました。

8月の祝日の前日、年老いた母親と二人暮らしのジャンニは、管理人の母親と叔母、
さらには医者の母親を一晩預かることになる。彼女たちに散々振り回されるが、
一夜が開け、彼女らに迎えが来るときがやってくる。しかし、彼女たちには
まだし足りない事があった。

この映画を撮ったきっかけは、以前監督が母親と2人暮らしをしている時期に、
管理人に親をあずかってくれないかとたのまれたことだったそうです。その時は
断りましたが、その後、もしその時預かることを承諾していたらどんなことに
なっただろうと考えたのだそうです。

映画を見て思いました。老人たちは、自分の意思に関係なく、制限を受けて生活しているんだと。
自分の行きたいところへは行けず、自分の食べたいものも食べることができない。肉体的に衰え
家族の手助けなしには生きてゆくことが出来ません。しかし、彼女たちの精神は、決して衰えて
いるわけではないのです。彼女らだって、美味しい物をお腹いっぱい食べたいし、お酒も
飲みたい。お洒落もしたいし、お友達と思い切りおしゃべりもしたい。でも、思うにまかせない
のです。そして、人間としての喜びを感じたいのだと。

家にも90を過ぎた祖母がいます。80代ぐらいいまでは自分で電車に乗り、お出かけをして
いましたが、足の怪我をして以来外に出ることは少なくなりました。それでも、毎日
お化粧をして、月に一度は美容院に行っています。時々昔のことを思い出しては
繰り返し語っています。この映画のおばあちゃんたちと同じなんだと思います。

このおばあちゃんたちを演じた女優さんたち、とっても自然で、どこにでもいそうな
おばあちゃん。実はみんな素人のおばあちゃん達なのだそうです。1人は監督の親戚、
1人は監督のお友達の親戚、あとの二人は老人ホームでオーディションを
したのだそうです。どうやって演出したのかという質問に、ちゃんと脚本を
用意したが、そのうち彼女らを演出するのは不可能だとわかった、と答えて
いました。だからこそ、自然な姿なのかも知れません。

最後は、被昇天祭の楽しい宴。映画祭の最後に、気持ちのいい映画を見せていただきました。

この映画、映画化までに7年かかったそうです。老人をテーマにしたような地味な
映画に出資者を見つけるのが難しかった様です。

グレゴリオ監督は、今回の映画祭でワールドシネマ部門に出品された「ゴモラ」という
映画の脚本にも参加しています。こちらは、ナポリのマフィアの暴露物で、原作者は
命の危険に曝されているという、恐ろしげな映画です。