こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「愛に関するすべてのこと」 All About Love 得閒炒飯

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2010年 香港作品
監督/プロデューサー : アン・ホイ
出演 : サンドラ・ン、ヴィヴィアン・チョウ、チョン・シウファイ、ウイリアム・チャン、ジョーイ・マン、ジョー・クー
 
「おばさんのポスト・モダン生活」、「生きていく日々」、「夜と霧」と特集上映、毎年東京国際映画祭での
上映があるアン・ホイ監督。今年は久々の来日も果たされました。最新作は、女性問題を、カラッと
あかるくコメディタッチに仕上げています。
 
ネットで出会った大学生との初めてのデートで思いがけず妊娠してしまうアニタ(ヴィヴィアン・チョウ)。
クライアントとして訪れた、隣の会社経営者の身ごもってしまうメイシー(サンドラ・ン)。二人は“母親の選択”
カウンセリングで再会する。彼女らはかつて恋人同士だった。
 
この映画、セクシュアリティの問題だけでなく、恋愛・結婚・出産、シングルマザー、仕事など、女性としての
個人的・身体的および社会問題はらんでいます。でも、決して暗くならずに済むのは、今の時代だからだと
言えると思います。今や女性には、人生における様々な選択があるのです。
 
彼女ら二人は妊娠するわけですが、相手と“結婚”するという選択をするわけではありません。彼女らが
選ぶのは、彼女らの人生であり、生活であり、家族であり、“伴侶”であるのです。
 
彼女らの葛藤のあいだで、男どもはおろおろするばかり。レズビアンフェミニストバリバリのメイシーの
元カノとその彼女まで出てきて、単純に二人が丸く収まって終わりという展開にはなりそうもない。何が
本当に幸せなのか。簡単に割りきったり、枠にはめるわけにはいかないようなのです。
 
アン・ホイ監督は“これは男性にはとっても不公平な映画”と語っていました。確かに、男は彼女らと
その周囲の人達に介入できる余地がほとんどありません。とはいえ、アン・ホイ監督は、メイシーの相手で
あるロバート役チョン・シウファイに、男性としての反応が不自然なものでないかどうか、確認しながら
撮影をしていったようです。
 
最後は二人のカップルに2人の男、2人のレズカップル、2人の赤ちゃんが家族の様相を見せていくわけですが
これは“ファンタジー”であるとホイ監督も語っておりました。現実的ではないにしても、こんな形の理想が
あってもいいのではという提示であり、この後この人たちがどのようになっていくのかは、観客の想像に
まかせたということではないでしょうか。
 
もともとコメディ的な役柄の多いサンドラ・ンですが、中性的な役も古惑仔のサブシリーズ「洪興十三妹」で
体験済みですね。器用な役者さんだと思いますが、磨きがかり、女優っぷりが上がったような気がします。
 
映画出演は十三年ぶりとかの、ヴィヴィアン・チョウ。私は残念ながら彼女の出演作を見たことがありません。
1990年代アイドルだった彼女。きっと20年前から全然変わっていないんだろうという風貌です。マニッシュな
メイシーとは対照的に、アニタは`50年代の女優さんのよう。こんな風に大人上品なフェミニン、久々に見た
気がします。
 
ジョニー・トー映画などでちょっと強面の役の多い、チョン・シウファイ。コメディもいけます。