こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」

本も読み、2回のドラマも見てしまった人には、“また?”っていう感じなのかもしれませんが、その割には人が入っています。私は本もドラマもまだなので、新しい映画として楽しませてもらいました。

原作を読めば、細かい心理描写や色々なエピソードなど、もっと楽しめるのではないかとは思います。でも、映画は、時間を切り取ったアルバムを見るような、違う楽しみがあります。めくりながら、その時々のことを思い出していく感じ。言葉では語りつくせない、視覚的な思い出。よみがえってくる、空気の匂いや周りの音。郷愁と甘酸っぱい思い。誰もが人生半ばにして振り返れば、こんなドラマを持っているのかもしれません。家族のこと、自分のこと、友達や仕事のこと。リリー・フランキーと同年代の私は、自分のことも重ね合わせながら、この“オカン”と“ボク”と、ときどき“オトン”のドラマを見てしまいました。

“オカン”の人生は、自分のためにあったようには見えません。飲んだくれて仕事もしない夫から、息子のために自立しようとします。息子と二人の生活は、当然繋がりの深いものとなりますが、彼女の愛情は前向きで、決して押し付けがましくも無く、干渉しない。息子のすることを信じているのです。いろいろあったはずの夫とすら、それでも出会った頃の感情を失ってはいない。彼女は、自分の思いを誰に告げるでもなく、自分の旨の中でかみしめているのです。時が流れて、人や場所が変わっていっても、彼女の心は変わることがない。人間こんな風になるには、よっぽど前向きで度胸がないといけない。自分が大事で我慢をせずに何でも言いたいこと言ってしまう、今の女にはできないことかもしれません。そして、無償の愛情を与えられる人こそ、愛を得ることもできるんですね。切なくも、優しくなれる映画でした。

オダギリ・ジョーは、ホントはイイ男系ですが、こういったぬぼーっとしたタイプもよく似合います。樹木希林は、さすがです。ひとつの気負いも無く、自然体な“オカン”になっていました。