「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」 The Iron Lady
2011年イギリス作品
メリル・ストリープが、アカデミー主演女優賞とりましたね。彼女、スピーチで
「またあいつかって、いわれてるかもしれないけど、どうでもいいわ!」なんて言ってましたけど
そんなことが言えるくらい、アカデミー賞常連の、だれもが認めざるを得ない演技派の大女優。
イギリス人女優たちを差し置いて主演をはったことだけある、見事なマーガレット・サッチャーぶりでした。
この映画、そのマーガレット・サッチャーの政治家としての伝記ものと思いきや、もっと人間の奥深くにある
普遍的なテーマの映画のような気がします。
そんな状況の彼女の意識の中で、映画が進行していきます。ケア付き、秘書付きでフラットに
一人暮らす彼女には、数年前に死んだ夫がいつもそばにいる。近くに住む娘が時々やってくるが
関係はどこかぎくしゃくしている。息子は会いたくても遠くにおり、会うこともかなわない。
そして、時折昔のフラッシュバックがあらわれ、今と過去が混在してしまうのです。
雑貨屋の娘が、いかにして英国首相の座に上りつめたのかという伝記的な側面、
在籍中の様々な危機にどのように決断を下していったのか、といったような歴史的側面にも
興味がありますが、彼女が首相として活躍した11年間について歴史的判断を下すには、
まだ時期尚早のような気もします。
それより、この映画を見て後に残るのは、彼女が女として、母親として、人間としてどのように生きたか
老いていくこととはどういうことなのか、ということでした。
それにしても、ホントにぶれない人だったんですね。自分の敵や、取り巻くブレーンたち、外国の圧力に
対しても。どこかの国の政治家に、今欠けているもののような気がします。“考えることが人間をつくる”という
信念。これは今世界中で欠けているものかもしれません。