こぶー休息中!

引っ越して来ました。おばブーの旅(主に香港)と映画の日々。

「老港正傅」 Mr. Cinema

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2007年作品
監督:サムソン・チウ
出演:アンソニー・ウォンテレサ・モウ、ロナルド・チェン、カレン・モク

先月香港で買ってきたばかりのDVD見てみました。

1964年から2007年、ある香港の家族のお話。左向港(アンソニー・ウォン)の一家は、
ビルの屋上に建てられた家に住んでいる。向港は映画館の映写技師。中国人であることに
誇りを持ち、共産主義を信じている。いつか北京の天安門広場に行くことが彼の夢だ。
お人よしで他人を助けることに熱心で、だから家計は火の車。でも妻の秀英(テレサ・モウ)は
そんな彼を心から愛している。息子の忠は、戦争を知らない世代。金儲けを夢見て
父とは違う道を行こうとしている。

香港の"New Cinema Paradice"という宣伝文句がありますが、現実的な香港人の心を
反映してか、そんなにセンチメンタルなものではありません。70年代のデモや、経済の
浮き沈み、香港返還、啓徳空港の閉鎖、SARSなど、話の間に事件や流行が織り込まれ、
はやった映画のシーンも盛り込まれていきます。(とはいえ、天安門事件には
触れられていないのはなぜって思いますが。)

また、お金儲け第一に猛進していると思われてる香港人ですが、皆が一気に“香港ドリーム”を
成し遂げたわけではありません。本流に取り残されながらも、一生懸命自分の道を
生きてゆく普通の人たち。ご近所との親密な付き合いあり、個人の政治的立場の
話あり、家計を助ける妻の話あり、若い世代の話ありで、いろいろな世代の人が見て自分を
振り返る映画になっているのだと思います。

香港人でなければわからない、微妙なところもたくさんある映画なのだとは思いますが
普通の人の人生の物語。普遍的なテーマでいっぱいで、胸を打たれ心温まります。

向港が亡くなった奥さんの手紙を見つけ読むシーンがあります。手紙の中に

 ロ個多年期、我ロ地就似一対筷子
 一斎品ロ嘗 人生ロ既甜酸苦辣
 無論味道點樣、都係珍貴ロ既

   この何年もの間、私たちは1対の箸のようなものでした
   一緒に人生の甘酸辛苦を味わってきました
   どんな味の物でも、珍しい貴重な物でも

そんな事が言える人生、いいなと思いました。この後は、これからは息子と一対の
箸となって、喜怒哀楽をともにして...ってセリフが続いて、泣かせます。

それにしても、アンソニー・ウォン、私とそんなに歳かわらないと思うんですけど、
いいオヤジになってしまいました。味のある顔です。テレサ・モウは、かわいらしく
歳を重ねていますね。ロナルド・チュンとカレン・モクの高校生姿は笑っちゃいます
けど、二人のすれ違う恋、切ないです。